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「そういえば、名前を聞いていませんでしたね」
「すまんが、名乗れない」
「何故ですか?」
「妖の弱点というかなんというか、名を知られてはいけないんだよ」
「そんな話、知りませんけど」
「お前さん、本とか読まないだろう?」
「何故それを!」
「有名な物語とかの定番だろうが、そうだな、ルンペルシュティルツヒェンなんてどうだ?」
「物知りなんですね」
「知り合いに読書家の首無しがいてな、それで名乗れない理由だが」
「はい」
「名前には魂が宿る、妖怪にはそれは色濃く出る」
それは、妖怪にとって致命的な弱点となる、名を知られたせいで倒された、という逸話を持つ伝説も多数存在する
陰陽師に名乗るという言う事は、自殺行為に等しかった、その事を伝えるのに一時間くらいかかった、何この子、勉強してないの?
「へー」
「ねぇ、ほんとに理解したの?」
「なんとなくは?」
「わかった、理解してないな?」
「そんな事より」
「そんな事って言った!」
「そんな事より、なんとお呼びすればいいのですか?」
「ああ…どうとでも呼べばいい」
「じゃあ…わんこで」
「却下」
「なんでもいいって言ったじゃないですか!」
だからってそれはないだろう
「外でもそう呼ぶつもりか?」
「うーん、では、ななしさんで!」
「また安直な…」
「いいんです!いつか本名を聞くので今はななしさんでいいんです!」
「お、おう」
縁が立ち上がる
「とりあえず、明日お母様を紹介します、夜も遅いのでこの部屋を使ってください」
そういって部屋から出て行った
「面倒な事を引き受けてしまったか?」
顔をしかめながら独り言を零した
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