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目を開けると、そこには…有り得ない世界が広がっていた。
口角を上げてニヤニヤ笑う猫。
ティーカップに延々と紅茶を注ぎ続ける、異様に大きな帽子をかぶった男。
上体を持ち上げて俺に話しかける芋虫。
懐中時計を忙しなく見ては走り回る兎。
そっくりだが、左右の半分がくっついている双子。
よく見ると、この異様な連中の首にはうっすらと傷があった。
芋虫は分からなかったが、猫も首の部分だけ毛が逆立っていたから、連中と同じように傷があるんだろう。
ただ首の傷はギロチンで切断されたのかと思うほど、あまりにも綺麗な一本線で、寒気と恐怖で身体が震えた。
「おかえりアリス」
「おやアリスのお帰りだ」
「さぁ、アリス裁判所に行こう。女王様に首をはねてもらわなくちゃ!」
何を言ってるんだ?
何でいきなり首をはねられる話になるんだ?
そもそもアリスって誰だよ!?
俺の疑問など誰も察していないし、喜んで裁判所に引っ張る連中に抗いながらも、俺は最初に傍聴席に座らせられた。
裁判所で被告になっているのはぺらぺらの薄っぺらなカードみたいな胴体の男だった。
カード…あれはトランプだ!
あのマークと数字は間違いない!
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