終章 終焉の幕開け

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あれからどれほど時間が経ったのだろう。主観では、先程まで彼と共にあいつと剣を斬り結んでいたはずだ。そこで私は不覚にもあいつの一閃を浴びてしまい、気絶したのだ。 彼…、フォミットは無事だろうか。彼と出会ってからこの5年間、いつも一緒にいた。洞窟探索のときも、氷山を越えるときも、遺跡の最上階で強大な相手と対峙したときも、王国政府に乗り込んで、王の謀略を止めたときもーーー。 彼と一緒なら何も怖くない、彼はとても強いのだ。私よりも、ずっと。そんな彼が負けるはずがない。そうだよ、何を恐れているんだ、私は。きっと私が休んでいた間も、上手くやり過ごしているはずだ。 だから早く立って、彼と共に戦わないと。 私はどこか重い体を奮い起たせ、その場に立ち上がる。そして 目を開けると、そこにはーーー 「…なに、これ…。なんなの!これはっ!!」 地平線の向こうにまで広がる無数の異形の怪物たち、空は赤黒く染まり、世界は闇に包まれている。辺りからは人々の悲鳴が聞こえてくる。 そして、思い出す。ここは巨大都市〔エデン〕の中央広場だったはずだ。そこであいつとの長年の因縁を晴らすべく最終決戦を開始した。だが、辺りにはそのような巨大都市があったようには思えない光景が広がっている。ふと、目に留まるものがあった。半壊した時計塔。注視すると、午前1時を指している。 遠くで、ひときわ大きい爆発音が響いた。その刹那、人々の悲鳴も響いた。 犠牲者は何人だろう。町が破壊されるたびに、胸の奥が疼く。 だが、起きてしまったことを悔やんでもしょうがない。今は、前を向くべきだろう。この町の人々のためにも、この事態を引き起こしたあいつを倒すと、右手の剣に誓う。 そのときだ。彼の後ろ姿を見たのは。なんだか泣き出しそうな気持ちになった。 私は思わず駆け寄って、声を掛けた。 「フォ、フォミット!無事だったん………」
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