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君の瞳が隠れていると言われたことがある。
そんな思い出が甦る夜は、決まって時雨が降っている。
窓ガラス当たる雨粒がやけに勘に障る。
温めた牛乳は直ぐに冷えて、時間だけが過ぎていく。
メールや電話をいそいそと待つ純粋な私は、酌み交わした酒の席で壊された。
今度、あいつに会ったら言ってやろう。
私の眼鏡は男避けだって。
そう思って時間は過ぎて。
ひとりで喫茶で牛乳飲んでる自分がいる。
牛乳というよりミルクの方がお洒落か。
子供用のホットミルク。
チョコを入れて、カカオ味。
外は雨だ。
傘はない。
迎えの車もない。
どうして帰れば良いのかすらわからなくなりそうだった。
「やっぱりここか。携帯にすら出ないなんて」
喫茶店の入口から彼が来る。
「いいよ。代金払ってくれたらね」
彼は疲れたように笑うだけ。
ただ、分かるのは眼鏡の奥の眼差しがすごく優しいということだけ。
今日、ここに来た理由を彼は知っている。
私の仕事がバー店だから。
嫌な客の相手をしたとき、ここに私がいることを察してくれてる。
「外もう冬だっていうのにコートも着ずに店を飛び出したんだって?」
彼が少し冷たくいった。
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