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「俺は、赤ん坊の頃から絶対に泣かなかったから……父さんも母さんも変な俺のことを気味悪がってそこまで愛してはくれなかったんだ。むしろ、家から出て上京するときには安堵した顔をしてたよ」
「……いい気味じゃ」
おかしいな。
そう思っているのなら、どうしてそんなに沈痛そうな雰囲気をしているのだろう。恨みがあるなら喜べばいいのに、悲しそうにしてくれるのだろう。
気が付いたら、俺はそのまま眠りに落ちていたようだった。
朝になって目覚めると、ずっと傍で見守ってくれていた幽霊の君が薄く笑顔を作って、知らない間に出来ていた残りご飯のおじやが鍋の中にあった。
賞味期限の近かった玉子が入ったそれは懐かしいお婆ちゃんが料理してくれたような味がして、俺が思わずその感想を述べると、怒った幽霊の投げたしゃもじが頭に直撃した。
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