第1章

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「要、まだいるのか?」 「うん、だめ?」 「そう、だめ。お前はもう帰れ」 「えー、何で。せっかく裕が入学したのにさ、お祝いぐらいしようよ」 「そんなもんいつでもできるだろ、俺はこいつに用があるの」 「なんだ、ふたりきりになりたいんだ?」 「勘違いするな、バカ。用があるのはこいつのおつむ。早速鍛えなきゃなんないんだよ」 「えーっ!」裕は声を上げた。 「鍛えって、まさか……」 「そう、そのまさか」 「今?」 「仕方ねえだろ、約束しちまったんだから」 「あ、さっき言ってた?」要が混ぜ返す。 「そう」 仁は、はあーっとため息をつく。 「優秀すぎるのも大変だねっ。じゃ、僕は退散しますか。裕、また今度ゆっくり話しようね。……winter」 「は?」 裕は、反射的に応じる。 「winter。覚えてて。ヒントはあれ。あの広告さ。また連絡するよ」 じゃあねー、と要は軽やかな足取りで去った。 しなやかで、まるでシャム猫かアビシニアンみたい。 初めて会った時も思った。 同じ猫でも我が家の猫とは大違いだわ。 いきなり抱きつくのはそろそろ止めてほしいけど。 そして、winter。 今は春なのにwinter。なんだろう?? 首を傾げて見送る裕の頭を、小突く者がいる。 きっと振り返ると、仁が眼を半開きにして立っていた。 「winter、なるほどなあ……」 ちらりと窓の外へ目を向け、肩をそびやかす。そして、彼は手に持つファイルを掲げ、言った。
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