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「だ、だって、ぶっつけ本番で、息継ぎもしなくちゃだし! そんなの……最初から上手くできっこないっしょ!」
「お前の音読は、スペルをばらばらにして無理矢理つなげたみたいだ。日本語だって、文節単位で区切ってやらないと何書いてあるかわからない。それと同じだ。初見かそうじゃないかの違いはあまり関係ない。つまり、聞くに堪えない英語だってことだ。これ以上は聞いていられないな」
「ひっ、ひどいっ!」
「くやしかったら、もう少しマシになるんだな」
「どうやって!」
「それをこれから教える」
仁は席を立ち、親指を立てて「来い」と促した。
ここで文句を言うと、また『バカ』と言われる。
バカバカ言われ通しも癪だ。裕はだまって仁の後を追った。
彼が先導する先は、慎一郎の研究室がある建物のほぼ真向かいにある図書館だった。
「やっと来た」
裕と仁を出迎えたのは、眼鏡の奥でにこやかに笑う瞳が印象的な、癖毛を持つ青年だ。
「いつ来るのかと思ったよ。もう店仕舞いしようか、どうしようかと思ってたところ」
「悪い悪い、待たせた」
「ほんと、待たせすぎ」にっこり笑う顔は穏やかだけど、少し、怖い。
邪気がなくて気が抜ける笑顔だから、なおさら怖い。
まるでパーマをかけたかのような癖毛の彼は、裕に気付き、「おやーっ」と声を上げる。
「久し振り」
「こんにちは、南井さん」
「うん、こんにちは」仁へ向ける笑顔とは別の、穏やかな笑みで彼女を見る彼は、姓を南井(みない)、名を功(こう)という。
「君、今日からうちの学校の生徒なんだよね」
「はい、いろいろとご指導頂くかもしれませんけど、宜しくお願いします」
「うん、こちらこそ。よろしく。あ、そっか」功は仁を見やる。
「今年は彼女なんだね。そうなんだろ、仁」
「その通り」
「そっか、良かったね、尾上さん」
「は、はい?」
「奴が面倒みて、英語落とした子はひとりもいないから。安心して」
えええーっ!
何でわかるの? 私が英語苦手だって!
彼女の問いに先回りして功は言った。
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