第1章

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「何……これ」 「ラジオ講座のテキストとCD。数年前のだけどまだまだ使える」と仁。 「教材用意しとけ、ってこいつに言われてね、それで、僕、ここ待たされてたの」にっこり笑って功が言った。 「何で南井さんが言われた通りに待ってたんです?」 「僕、時々、司書のバイトしてるんだ」 ホントかしら。 裕は手に持つテキストをまじまじと見る。 テキストの表題は基礎英語。1年、2年、3年でそれぞれ4月号だ。 「それ、学校のね、備品なのね。毎年こいつが面倒みる学生用に、図書館で保管してるの。今日は図書館は行事があるからお休みなんだよね。だから司書から鍵を預かって待ち構えていたってわけ」 「基礎って……中学英語?」裕は隣の仁に問う。 「そ」仁はあっさり返す。 「ちゅうがくせいから、やり直せ、っての?」 「そう。基礎がなってないから、やり直す」 「そこまでっ! 何で私がっ!」 「1回15分。いいか、それぞれの単元を必ず毎日やるんだ」 「それだけで45分?」 「そ。一緒に、今放送してる奴もチェックしとけ。1年、2年、3年、全部」 「それも45分?」 「そう。休みなしで1時間半だな」 「毎日?」 「そう、毎日」 「休めないじゃん!」 「大丈夫、ラジオ分土日はやってないから、その分は休めるぞー。良かったな」 「良くない! 1年から3年までやれっていうなら、CD版だけで充分じゃないの?」 「へりくつはいいから、まず始めてみよう、とは思わないわけ? 中一からの振り返りなら簡単だろ」 「だって!」
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