第1章

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◇ ◇ ◇ 辿り着いた先では、伯母が陽気に「お帰りなさい」と彼女を迎えた。 母の姉である道代は、母を月とするなら太陽といった案配で、似ているところはほとんどない。 あらゆるところが丸く、性格も丸く、陽気この上ない。 裕には、親戚と呼べる人は慎一郎と道代一家だけなので、親戚付き合いの難しさは良くわからない。たくさんのいとこ達と遊んだ経験もない。 学校で、よくいとこたちとのあれこれを話す同級生たちが内心羨ましかった。 その点では、きょうだい話にも縁がなかった。 誰それのお下がりを嫌がる友と同じ話ができない。彼女はひとりっ子だったから。 裕は、大家族とか、ひとつ屋根の下でわいわいという生活にちょっと憧れていた。 青山の本家に、両親と慎一郎、そして道代に悟にいとこが加わった図を想像してみた。 それはとても幸せな一家の図なのだろうか? ちょっと違う気がする。 私の願いは、ないものねだりなんだわ。 裕はため息をつく。 家族の数は少なくても、両親の仲は彼女の年代を思えば良好と言えた。そこは良いではないか。 親子そろって、たとえ一方通行であろうとも、言い合いができる環境ができていたのだから。上から押さえつけるような育て方をしない両親には感謝しよう。 一応。 それに、道代伯母は、嫌な人ではない。 「裕ちゃん?」 まじまじと見返す姪に、道代は言う。 「どうかした?」 「ううん、伯母さん、ただいま」 「はい、おかえりなさい。あら、浮かない顔しちゃって」 「あのね」
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