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「お父さんもお母さんも、白鳳に附属中の頃から通ってたんだよ。ズルくない? 私だって、そうしたかったのに、できなかったんだよ? 何で? 叔父さんもここの出身だったんだよね。おじーちゃんも勤めてたんでしょ?」
「ああ、そうだね」
何度同じことを問われても、まるで初めて聞いたように慎一郎は、うんうんと頷き、答える。
「うん、今でもさ、お正月に大学駅伝で出場校に入ってると応援しに行ったりTV中継欠かさない人たちなんだよ。叔父さんだってTV見てるでしょ」
「そりゃまあ、うちの学生が出るのだから、応援するのは当然だな」
「じゃ、何で、応援を忘れないくらい愛着のあるところに、娘を入れたいと思わないの?」
「それは――君の意志を尊重してだね、親の都合を押しつけていないだけだろう。」
「私の希望は決まってる。ずーっと、ずーっと、中学受験の頃から、行きたいってお願いしてたよ」
「自宅からは遠すぎるから、反対したんじゃないかな」
「私は押しつけてくれてもよかったのにーっ!!」
ははは、と慎一郎は苦笑した。
こんな会話を、何遍繰り返しても同じ答えで応じてくれる、大学に押し掛けてもやんわり注意はしても頭ごなしに叱りつけたりしない男の側は快適だった。居心地がよかった。
家とはまた違う。
友達と遊んでいる時ともまた違う。
まだボーイフレンドとの付き合いを知らない彼女だ。この心地よさは恋人同士のデートに近いのだと全く気付いていなかった。
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