第1章

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つやっつやでさらっと流れる髪を肩まで伸ばし、小首を傾げて彼女を見る瞳はとても大きい。 裕も目は大きいと言われる方だ。しかし、目の前の学生には到底かなわない。 形良い眉はゆるやかに弧を描き、豊かな睫毛が瞼の際を彩っている。 女の子は、自信のある者ほど容色についての印象を間違えることがない。 周りから美人と言われ続けて育った裕は、十人並み以上の美貌の持ち主だと自負している。 そこが彼女のパーソナリティーに与えた影響は小さくなく、思春期の勘違いを起こす元になったが、こと見かけに関しては、勘違いだとは言えないぐらいは整っていた。 あの子とこの子と私、3人の中で誰が一番きれい? 決まってる。私よ。 ずうずうしいにも程があるが、女にとって自分の美貌を誇れるのは嬉しいものだ。 が、目の前にいる学生はどうだ? 自分より多分年上、絶対男子、でも彼ほどかわいらしく、魅力的な人を、女子でも男子でも見かけたことがない。 一言で言うと、「私、負けましたわ」の回文がぴたりと合う。 その人に、きれいって言われた? 卑屈になりかけた時、きらきら笑顔の彼が、たーっと駆けてきてむぎゅーっと裕に抱きついた。 「あひゃーーーーーーーーっ!!」 変な叫びを上げる彼女に構わず、彼は言った。 「かわいい、うん、ほんとかわいいーっ! 僕ね、君のこと以前から見てたんだよ、だって、先生のとこに来て長いんだもん。知ってて当然だよね? 何てきれいな子なんだろうっていつも思ってた」 まるで、少女マンガのキャラクターが、女子に向けて告白するようなことを言う。 言われた方はたまったものではない。 「僕が男の子だったら、絶対君に恋してるのにって!」
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