第1章

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「……え?」 火照った頬が少し冷めた。 「え? 男の子って……えっと、あのお?」 「この人、ホントは男子じゃないんじゃないの? て思ったでしょ」 「え、あの、はい」 言って、カーっと頬が赤くなる。 「ごめんなさい、私、男の子と間違えちゃって」 「ううん、まちがってない。僕、女子じゃないもん。正真正銘、心身共に男の子だよ」 「……え?」 「だからって女の子に興味がないとか、男子が好きだとかじゃなくてね、うーん、僕は君を異性として好きになることはないってこと。だから安心していいよ!」 はい、安心しました。 何て言えるかあ!! 賢い子がいる学校の生徒は、おつむのねじが10本ぐらい飛んでどこかに言ってるんじゃないのおお! 「うわああああああーー!」 裕は叫んだ、まるで吠えるように。 「いつまでも抱きついてないで、離してあげたら? 彼女困ってるよ」 苦笑しながら助け船を出したのは、別の男子学生だった。 「あ、そうだね!」 ぱっと腕の力を緩められて、ホッとする。 「あんたは、誰彼構わず抱きつく癖、直した方がいいと思うよ」 「だってー、好きな人には好きだって言いたいじゃない?」 「じゃ、言うだけに止めておかなきゃ」 「止められないんだもーん!」 彼と友人との会話を聞きながら、裕は思った。 知らない男子に抱きつかれたの初めてなのに、全く何も感じなかった。 まるでぬいぐるみに抱っこされてるみたい。 不思議な人。 でも! この人は、男子よ、男子ぃ!! 裕は目の前の『彼』を見る。 『彼』は、長年の友達のように、あるいは飼い猫のように裕を見返した。 その瞳に向かって訊ねた。 「あなたは? あなたたちは誰?」 「僕たち、検定倶楽部のメンバーだよ」 「けんてい、くらぶう?」 何だ、そりゃ。 呆ける裕に彼はふふふと笑いかける。 「今度教えてあげるよ。検定倶楽部が何か」 叔父さんのところに来る人は、よくわかんない。 叔父さんもつかみどころがない人だけど。 この人たちはもっとわかんない。 「ねえねえ、僕たちのことはいいから、君のこと知りたいな。尾上さんでしょ?」 「え、何で知ってるんです?」 「だって先生の姪なんでしょ、だったら姓は尾上。そうじゃない?」 「ですね」 「尾上、何さんなの? 下の名は? 教えてよ」
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