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「……え?」
火照った頬が少し冷めた。
「え? 男の子って……えっと、あのお?」
「この人、ホントは男子じゃないんじゃないの? て思ったでしょ」
「え、あの、はい」
言って、カーっと頬が赤くなる。
「ごめんなさい、私、男の子と間違えちゃって」
「ううん、まちがってない。僕、女子じゃないもん。正真正銘、心身共に男の子だよ」
「……え?」
「だからって女の子に興味がないとか、男子が好きだとかじゃなくてね、うーん、僕は君を異性として好きになることはないってこと。だから安心していいよ!」
はい、安心しました。
何て言えるかあ!!
賢い子がいる学校の生徒は、おつむのねじが10本ぐらい飛んでどこかに言ってるんじゃないのおお!
「うわああああああーー!」
裕は叫んだ、まるで吠えるように。
「いつまでも抱きついてないで、離してあげたら? 彼女困ってるよ」
苦笑しながら助け船を出したのは、別の男子学生だった。
「あ、そうだね!」
ぱっと腕の力を緩められて、ホッとする。
「あんたは、誰彼構わず抱きつく癖、直した方がいいと思うよ」
「だってー、好きな人には好きだって言いたいじゃない?」
「じゃ、言うだけに止めておかなきゃ」
「止められないんだもーん!」
彼と友人との会話を聞きながら、裕は思った。
知らない男子に抱きつかれたの初めてなのに、全く何も感じなかった。
まるでぬいぐるみに抱っこされてるみたい。
不思議な人。
でも! この人は、男子よ、男子ぃ!!
裕は目の前の『彼』を見る。
『彼』は、長年の友達のように、あるいは飼い猫のように裕を見返した。
その瞳に向かって訊ねた。
「あなたは? あなたたちは誰?」
「僕たち、検定倶楽部のメンバーだよ」
「けんてい、くらぶう?」
何だ、そりゃ。
呆ける裕に彼はふふふと笑いかける。
「今度教えてあげるよ。検定倶楽部が何か」
叔父さんのところに来る人は、よくわかんない。
叔父さんもつかみどころがない人だけど。
この人たちはもっとわかんない。
「ねえねえ、僕たちのことはいいから、君のこと知りたいな。尾上さんでしょ?」
「え、何で知ってるんです?」
「だって先生の姪なんでしょ、だったら姓は尾上。そうじゃない?」
「ですね」
「尾上、何さんなの? 下の名は? 教えてよ」
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