帯祝い

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帯祝い

古来より安産を祈願するため、戌の日に腹帯をまく風習がある。 その喜びを控えた女性がここにも一人。 「明日はまたおじいちゃんおばあちゃん、四人勢揃いであなたに会いに来るのよ。」 ふくらみの目立ってきたお腹を優しく撫でながら話しかける。 不妊治療三年目にしてようやく授かった我が子。 一つの区切りを迎えるたび、ここまで育ってくれていることに改めて嬉しさがこみ上げる。 ましてや一人っ子同士の結婚で双方の家での初孫ともなれば、すべての行事は大がかり。 こんなに皆に大切に思われて、この子はなんて幸せものなんだろう。 「あら、あなたも嬉しいの。」 母の気持ちが伝わったのかお腹の中で喜びのダンスが始まった。 今、この子は笑っているに違いない… お腹を撫でながら語りかけた。 「明日はもっといい日になるわよぉ~」 そして、母は優しく声をかける。 我が子が明日を笑顔で迎えられるために… 「おやすみ。」
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