追想

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十年前、体が弱かった彼に母はべッドの枕元で勇者の物語を読み聞かせた。そして朝、畑を耕しに行く母親(父はすでに亡くなったと聞いている)を見送り、一人で部屋に横になりながらぽつり、と呟いた。 「ぼくたちが、まおうをたおせるくらいつよかったら、ゆうしゃさまをよばなくても……なんて」 そこまで言って、アルバは丸い頬に悲しげな笑みを浮かべた。 ティエーラに住む者は、ほぼ誰でも魔力を持って生まれてくる。心臓が、魔力の核でもあるからだ。
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