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エンジンをかけてみて分かったのだが、アイドリングは安定せず、ハンチングが止まらない。
1300rpmから1500rpmを行ったり来たり。回っている間にエア噛み等を疑ったが、ホース類は新品に変わっていたし、付け忘れも無い。
「とにかく、アイドルを調整してみよう。話はそれからだ」
バッテリーの近くにあるカプラーに配線を繋いでアースに落とすと、コンピュータによるアイドル制御をしなくなるので、そこで俊哉はインタークーラー裏にあるスロットルアジャストスクリューを指先で回す。
アイドリングが900rpmまで落ちたが、ハンチングは直らない。
その間に美波がインタークーラーを止めているボルトを4カ所外していた。
「よし、止めるぞ」
「あいあい」
エンジンを止めると同時にホースを止めているバンドを外しに掛かる。
ラチェットの小気味の良い音が響く。程なくしてインタークーラーが外れた。
FCのスロットルのバタフライは三つあり、その分、大きくなってしまう。
そのすぐ横に置かれるようにステーで固定された二つのスロットルポジションセンサー。
それに繋がるカプラーを引き抜き、サーキットテスターを取り出す。カプラーの並んでいる端子にテスト端子を当てる。
まずはフルレンジ側から測定する。
「980Ωだな。範囲は確か600から900だ。こいつは取り付けをズラす必要がある」
「プラスドライバーと10mmのソケット、ユニバーサルジョイントだね」
現役で働いていただけ有って、美波は狭く入り組んだ所にあるボルトも工具を組み合わせて難なく外していく。
3カ所のボルトを外すと、ステーをずらして締めやすいボルトを締め込む。
「どう?」
「880。800以下まで落とそう」
「りょーかい」
貫通ドライバーとハンマーを取り出して取り付けのステーを小突き始める。
少しずつ取り付け位置がずれてくる。テスターの数値が下がっていく。
「どうかな?」
再び仮止めした状態で測る。表示は760Ωを示した。
「よし、本締めしてくれ」
「よしきた」
一旦、全てのボルトを着座させ、一つ一つに少しずつトルクを掛けていく。
全てを締め終え、再び抵抗を確認。
「810。オッケーだ」
続いてナローレンジの測定を始めた。エンジンが冷め切るまでの勝負である。
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