EP.0 DBA-ZC6

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三人はISで国道沿いのファミレスに向かっていた。 レクサスの高級感溢れる内装で、マークレビンソンの上質なオーディオシステムから流れる音楽が東方アレンジメドレーと言う贅沢。 しかし、運転席シートにはレカロのSP-Gが奢られ、ステアリングはスパルコのディープコーンに変更されていた。 それに伴い、後付けのパドルシフトも追加されている。 ミッションはAT。強化しているらしいが、これには正直驚いた。 「ごめんね。仕事が長引いちゃって。その上にC1をトロトロ走るFDが居てさ。追い越すのに手間取って」 哀れなFDだ。クルマのポテンシャルはともかく、乗っている相手が悪かった。 モデルの仕事であるレースクイーンと雑誌の撮影をこなしながら、D1レディースに出場して上位の常連なのだから。 「あれ、モデル以外に何してましたっけ?」 乗り心地の良いリヤシートに戸惑いを隠せない美波が言った。 「本業は行政書士。八王子の法律事務所でね」 恵里は法学部在学中に行政書士の資格に合格し、卒業と同時に法律事務所に就職した。 そのときに33スカイラインはサーキット専用にしたらしく、今は走行会や練習用としてサーキットに保管している。 「でもみーなちゃんも学校に通い始めたんだって? 感心しちゃうなぁ」 「はは。俊哉も就職したし、家も指定工場になっちゃって。必死扱いて取った3級じゃ足りないから本格的に勉強しようと思って」 美波はこの春から2級自動車整備士の資格を得るために、短期専門学校とやらに通い始めた。 実家の青木モータースが指定工場、いわゆる民間車検場になり、やることが増えたため、集中して勉強するために22歳にして学校に入学したのだ。 「これは彼氏が養ってあげないとね」 「新米のカスタムエンジニアはただの雑用だって。給料も良い訳じゃない」 実際、給料も良いわけではない。LANケーブルの制作にようやく慣れてきたところなのだ。 「新車を買っておいて何言ってるのかしら。このISだって中古で買ったのに」 「新車じゃ無い。A型の中古だ。これと違って半分はローンだし」 「ま、がんばってね。ここで良いかしら?」 恵里はウィンカーを出した。段切りしながら入ったのは、大手ファミリーレストラン。24時間営業だから、ダベるならやっぱここである。
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