16人が本棚に入れています
本棚に追加
RedWindに到着し、BRZをいつもの来客用の駐車エリアに止めた。
エンジンを止めて降りると、ガレージの横に佇む真っ赤なクルマが、まるで吸い寄せられたかのように眼に入った。
色褪せこそはしているが、真っ赤なボディはロングノーズとリトラクタブルヘッドライトという特徴を持つ。昭和の時代にデザインされたのにも関わらず、古くささは微塵も感じない。
FC3S後期。俊哉は平成生まれであるが、そのクルマに懐かしさを覚えていた。
かつて姉から託され、我が手のように動かすことが出来たクルマだ。
そのFCは不慮の事故により鉄くずと化してしまったが、培ったドライビングは今も生きて繋がっている。
「よう。待ってたぜ」
柳瀬が現れた。RedWindのポロシャツはいつも通り。
「あれが例のクルマだ。ボディの状態は塗装以外、悪くは無いんだが、あいにくエンジンが終了のお知らせなんだ」
手に持つ見覚えのあるキーを握りなおすと、FCのロックを外してドアを開け、ボンネットのロックを開けた。
俊哉が中のレバーを引き上げてボンネットを開けた。この軽さはアルミだろう。
カップリングファンの向こうに鎮座する13B。インタークーラーが真上に置かれ、赤いROTARY TURBOの文字が誇らしげだ。
「セル回すよ」
返事をすると、セルが回り出す。しかし、そのセルは勢いが良すぎる。エンジンが圧縮していないことは本当のようだ。
「アペックスシールでしょうね。十中八九おそらく」
震えるエンジンが止まる。回る気が無い13Bはただ沈黙した。
キーを抜いた柳瀬はドアを閉めてもたれ掛かる。
「で、本題だ。こいつで走る気は無いか?」
「は?」
最初のコメントを投稿しよう!