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亜衣華は仕事の打ち合わせを終え、代金を支払う。ついうっかり手を滑らせて、美波と里沙の分まで払ってしまったのはご愛敬だ。
美波と話そうかと思ったが、旦那からの電話ならば仕方ない。先にお暇させて貰うことにした。
S4に乗り込み、ブレーキを踏みながらプッシュスタートスイッチを押した。BRZとは違う、重厚な音でFA20は目覚めた。
ラジオからは日本で人気らしい曲を流れてくるが、興味が無かったので分からない。
シートベルトを締め、シフトをDレンジに入れると、電動パーキングブレーキが軽いモーター音と供に解除された。
道に出ると、ケータイに着信があることをナビが知らせた。集音マイクで答えるべく画面の通話ボタンを押した。
『立花様の電話でよろしかったでしょうか? 私は……』
懇意にしているタイヤ屋からの電話だった。
『注文されたタイヤとホイールが届きました。すぐに組みましたので、いつでもお受け取りが可能です』
「Thanks.早い仕事助かるよ~」
道行くワゴンRを見送り、反対方向にステアリングを切った。リニアトロニックとFA20の豊かなトルクがゆったりと加速する。
「明日の開店時に取りに行くよ~。じゃあ、よろしくぅ~」
『ありがとうございます』
通話を切った。抑えられたラジオの音量が元に戻る。
素晴らしいクルマに乗せてくれた礼はこれでいいだろう。自然と鼻歌が出る。
「素晴らしい才能がそこにあるんだから、生かしてあげなきゃね~」
レンジをMに入れた。パドルシフトでギヤを落とし回転を上げる。
ちょうど良いワインディングだ。楽しまなくては損だ。
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