ep.7 始動

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自販機からスポーツドリンクを取り出すとすぐに栓を開け喉に流し込んだ。 タオルを持ってくれば良かったのだが、あいにく忘れてしまった。外は気温23℃の快晴。 素晴らしい熱の発生源たるロータリーとガレージに居たら、いくらシャッターと排煙窓を開けていてもサウナと変わらない。 袖をまくり、外気と肌が触れる面積を増やしてやる。 「俊哉、忘れ物」 美波からタオルを投げ渡された。水色のスポーツタオルは間違いなく自分のモノ。 渡した本人も自分のタオルを首に巻いていた。 「サンクス。忘れてきていて困っていたとこだ」 「じゃあ、コーラのゼロ」 悪戯っぽい笑みを浮かべ見上げてくる。つまりお礼に奢れと言うことか。まぁそれも吝かでは無い。 「仕方ないな」 自販機に小銭を投入し、美波にボタンを押させた。ガコンと黒い缶が滑り落ちてくる。 「さんきゅ♪」 拾い上げるなり栓を開ける。炭酸の圧が抜けるキレのいい音のあと、喉を鳴らして飲み始めた。ビールでも飲んでいるような良い飲みっぷりである。 FCの方はようやくハンチングが収まったところである。 純正タービンは多少のガタはあれど、問題ないレベル。 しかし、ブーストを掛けると失火を起こしていた。ゆっくり回していくと7000rpmまでしっかり回るが、急激に踏み込んでブーストを掛けると5000rpm以上回らないのだ。 柳瀬にはエンジン本体のみ頼み、補記類についてはそのままで良いと言っていた。それはインジェクターも含まれる。 つまり、圧縮と火花は揃っているため、消去法的に考えられる原因は混合気だった。 これについては外してみないことには分からないが、恐らく犯人はインジェクターだろう。純正タービン、純正コンピュータでレギュラーガソリンが原因とは考えにくい。 「インジェクター見るならさ」 美波は空き缶をゴミ箱に放り込むと、ヒップポケットに入れていたメカニックグローブを手に嵌めた。 「シール類も全部変えておいたら良いんじゃない? 見た感じ大がかりな作業って分けでもないしさ」 「そうだな。社長か柳瀬さんだな」 それも一理ある。休憩が終わったら聞きに行くことにしよう。 スポーツドリンクを砂漠のように乾いた喉に通した。
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