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コンビニスイーツもなかなか侮れない。差し入れで無駄に高いスイーツを口にしたこともあるが、それと比べても遜色ない味である。
亜衣華はS4を向きながら花壇の縁石に腰掛け、ニーハイブーツの履いた長い脚を投げ出してコンビニスイーツのシュークリームを頬張っていた。
「やっぱこの味が舌に合うな~。んん~、タイムズスクエアのホットドッグまた食べたくなって来ちゃった~」
のんびりとした口調で幸せそうな表情で頬張る姿は、誰の眼にもハリウッドの銀幕で活躍する女優には見えなかった。
文字通り甘い時間を過ごした後、立ち上がってショートデニムに付いた塵を払い、背伸びをしてから七分袖のシャツを直した。
包装をゴミ箱に捨てると、かなりやんちゃそうなランエボ7がコンビニに入ってきた。
外観は黄色のノーマルだが、ホイールはRAYSのTE37、タイヤは恐らくポテンザのRE-71R、足回りも何かしら入っていそうだ。
つい眼に入ってしまった。前の愛車がランエボ9だっただけに自然と視線が向く。
女優業をする前なや無理して買ったら事故歴有りで戸惑ったが、結局最近まで日本に居るときの相棒だった。
そのランエボも、仕事で知り合ったプロデューサーがレースで使っている。遠いイギリスの地で。
降りてきたのは若い男二人組。大学生ぐらいだろうか。
「青年よ、理解しなければならないよ~。そのクルマはね」
S4に乗り込み、FA20を目覚めさせる。最近の日本車らしい静かさで、押さえられていながらも力強さすら感じる音仕事の打ち合わせまで時間はまだある。少し遠回りしよう。シフトをDレンジに入れると、スルスルと駐車場を滑るように出口に向かわせた。
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