ep.7 始動

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ウィンカーを出したところで止まった。重低音を響かせながらゆったりと流すガンメタリックのCL1アコードを見送り、その後ろに着いた。 「センター出しのマフラー。いや~、むしろエキゾーストパイプかな~?」 純正エアロに恐らくワゴンフェンダー、程よく落とされた車高は走りを意識している感じ。 敢えてのウィングレスも悪くない。ユーロRのエンブレムが誇らしげだ。 二車身半から三車身ほど空けた車間距離でゆったりとした流れに乗った。S4はその豊かなトルクと熟成されたCVTは低速でもその懐の深さを見せつける。 肩肘張らずとも流すだけでも快適で人に寄り添うクルマ。S4を選んだ理由の一つだ。 もちろん、それだけならば高級セダン等に乗れば良いが、日本という国でこのクルマのサイズ感が最もちょうど良い気がするのだ。 1.8mの車幅は確かに大きいが、ヤリスやジャズ……、違った。ヴィッツやフィットとたった10cmしか変わらないのだ。それを大きいと感じるか小さいと感じるか、見切りの良さや車幅感覚の掴みやすさで大いに変わる。 その点、S4はかなり意識して作っている。WRXの市販車は始めて乗るが、違和感なく乗ることが出来た。 田舎道を穏やかに走り、やがて峠道に入る。今はゆったり流したい気分。CL1が乾いたVTECサウンドを響かせて加速していくのを見送り、2000rpm以下で悠々と上っていく。 「VTECもやっぱ良いね~。H22Aはやっぱ名作だよ~」 だが、すぐに邪魔が入る。ルームミラーに写るは黄色いエボ7。さっきの若者二人組だ。
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