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 じゃあ、鏡さん。  ここらで最後に教えて。 「一番の幸せって、何だろう」    その答えを演者の私は知っていた。  ハッピーエンドは、きっとみんなが幸せになれる。舞台にたった人にそれは平等に訪れる。  人生という舞台に、生きているって長編劇に、幸せはきっとあったってことを。  舞台袖に去った後も永遠に一人で騒いでいた。けど、もう疲れた。  そのことに私が気づいた時、ようやく私を散々無視してきた鏡さんが、最後の締めくくりを言いに、その重たい口を開いた。ガラスのきらめいた表面が私を照らす。  こうして誰にも聞こえないおしゃべりの終わりを告げる言葉がようやく、振ってくるのだろう。    私はその後に紡がれるであろう言葉を聞いてから、また一眠りでもしよう。  次に目が覚めたら、もう五月蝿く居座ったりなんかしない。  一人でぐだぐだ立ち止まるんじゃなく、今度こそ「生きてることが、幸せ」だって、誰かにちゃんと伝えられるような道を進めるように。
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