第1章 平民

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「おーい平民ちょい昼メシのパン買ってきてよ」 「俺もたのむわ平民」 「へーミンウチらのもよろしく~」 『平民』いつからか呼ばれたかなんて覚えてないけど誰がつけたかなんてわからないけど良くできたあだ名 僕の名前、『平野拓民』の頭の『平』と後ろの『民』をとっただけのシンプルで良くできたあだ名 勉強ができる訳でもない、運動ができる訳でもない 顔が良いわけでもない、お金持ちでもない何の取り柄もない空気みたいな人間 僕だって何もしなかったわけじゃない、死にものぐるいで勉強してテストで確かな手ごたえもあって 『中の上』 人より背が低くて体格も細い体を逞しくしたくて、人より運動ができるようになりたくて何ヶ月も必死に筋トレして、毎朝走って、いろんなサプリを試して 『中の下』 体格も目で見てわかるような変化も無く僕は高校二年の時に人は産まれ持って得ている物と持たない物があると実感した 僕は何も持って産まれてこなかった持たざる者だって そんな平凡な人間は平凡に学生生活をして、普通の会社に就職して、平凡な家庭を持って、平凡な人生を送るんだって思ってた でも僕にはそんな平凡な人生すら許してもらえなかった 弱肉強食って言葉どうり弱い人間はターゲットにされる『イジメ』最初はせいぜいパシリにされる程度だったけどイジメはエスカレートしていく物、ジュース代、昼のパン代、カラオケ代、数千円、数万円とレベルアップしていく、拒めば暴力 親に辞書を買うとありきたりのイジメられっ子の嘘をつき 親の財布からお金を抜きとった 当然そんな事をすればすぐにバレる、親に問いただされイジメが発覚 すぐに学校に呼び出され校長、教頭、担任に母親と共に散々質問を受け帰宅 帰りの車のなかで母親は怒るでも慰めるでもなく僕こう言った 『情けない』と、何も考えられなくなった 唯一味方でいてくれる存在だと思ってた親からの一言にボロボロだった僕にはトドメの一撃と言っていいほどの言葉だった
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