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「13人の中から本当に契を結ぶお妃様を選ぶわけだし、まァ"候補"だからいんじゃない?」
「そんな他人事みたいに……」
「他人事だし」
「……この悪魔め」
「悪魔なことも否定しないよ」
この憎たらしい程豪邸な屋敷の一角に私の檻となる部屋が与えられた。そこまでに少ない私の私物を運んでいるときに、隣でフードを目元まで被った男の姿をしたソイツは、愉しそうにけらけらと笑っているわけだ。
和を基調としているのに、高価な洋の物が煌びやかに施されるこの屋敷は。
心底思う。国を治める皇帝はこんなにも良い暮らしをしてるのかと。
はぁ、とため息を吐き出して長々とした屋敷内を歩いていく。
「今、この屋敷から逃げ出したいって思ってたでしょ。あとついでにお腹空いたとも」
「あーもう!ユザ!勝手に人の心読まないでよねっ」
「昔から散々言ってるけど、"読んだ"んじゃなくて"伝わっちゃう"んだよ」
くっ……これだから悪魔は……。
「昼食はあの皇帝が一緒に、って言ってなかったっけ」
「言ってたわ。他に12人気の妃候補がいる所で、ね」
「ねぇ、セリ」
私の名前を読んだ彼、ユザが一歩前に出ては振り返り、ニタリと笑った。
「本気でセリが願うなら前みたいにこの国を一変することもできる。
僕にはその力がある。そして、この力を使えるのがセリだけってこともね」
可笑しな悪魔だと、つくづく思う。私はその答えに苦笑いで返した。
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