No.1 「代償はお前だ」

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昼食の刻になる数分前、私は物凄く悩んでいた。 部屋に用意されていた服を着ていくべきかどうか。 「セリの服だと身分もバレそうだし、なんせこの屋敷では悪目立ちするよね。着た方が得策だと思うけどなァ」 「それは、わかってる」 「あれか、皇帝様に貰った服って言うのが気に食わない感じか」 「……そう。ここにある服を着たら、アイツの所有物になる気がして」 いや、もう皇帝に身を売ったんだから「所有物」であることには変わりはない。 ただ、心まではそうなりたくない。 「所有物」という言葉通りに私を除く12人の妃はなんとか皇帝に見初められそうと躍起になっているとこの屋敷に来る少し前噂で聞いたことがある。 昼は媚を売り夜は体の関係を持つのがあたりまえ。 しかし夜の相手を選ぶのは皇帝様の気まぐれ。 妃候補同士でのやりとりもただただ平和に過ごさせてはくれないだろう。 もし、万が一その気まぐれに当たってしまったら。 私は取引の代償として差し出された"物"に過ぎない。逆らうなど無理だろう。 だから、心までは売りたくないと誓う。 鏡の前で紺色髪の毛を整えると、ユザは「隠れてるね」とだけ言って姿を消した。横髪の一部が、漆黒に染まるのを確認してから、そのまま着替えず部屋を出た。
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