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昼の刻、大広間にて。
畳が広々と敷かれる空間に、向かい合わせに12人のお妃様。
その端と端に、あの皇帝と私が向き合う。
運ばれてきた食事に手をつける前に、妃候補の鋭い言葉が飛び交う。
「何、その薄汚れた服」
「身分名乗りなさいよ」
「同じ場所で食べるなんて、汚いものが口に紛れそうだわ」
極めつけに、最奥にいる皇帝の冷酷な目が私を捉える。
真紅の髪に、吊り目がちな瞳。鼻筋が通った顔立ち。その存在は静かに佇まいしていても存在感ある容姿だ。
美しい、というのだろうか。
見た目だけで言えば、とてつもなく、儚さと妖艶さを持っている人だ。
見た目だけで言えば。
「第13妃、俺が与えた服はどうした」
「……華やかなものは苦手でして」
皇帝の圧が肌に緊張を与える。
目を逸らして答えるので精一杯だ。
「……愚かだな」
「えっーーーーっ、?!」
僅かに吐き出された言葉を聞き取ることが出来ずに、聞き返そうとした時だった。
バシャン、と乾いた水音が響き、髪から水滴が落ちる。
ヒヤリと頬が冷たい。何これ。何が起こったの。
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