2人が本棚に入れています
本棚に追加
アラームが鳴った。
目が覚めると、ミハイルの寝起きの顔があった。
「おはよう、ローザ」
ミハイルは恋人のおでこにキスをすると、ゆるゆると座った。
「夢を見たの」
ローザは寝ぼけたようにつぶやいた。
「どんな?」
「旅行に行った夢」
「楽しかった?」
「うん、楽しかった」
ミハイルは笑って、恋人にシーツをかけなおすと、ベッドを出た。
「ね、私フランスに行きたい」
ミハイルは寂しそうに首を振った。
「ダメだ…僕はイギリスを出ることはできないんだ…ごめん、ローザ」
「…そう…]
理由を聞きかけたが、止めた。
またその理由までも、情報部に報告しなければならなくなるだろう…。
アダムスは事務所の席に座って、エレンからの電話を切った。
ログノフが博士を追ってバーミンガムに行ったという報告だった。
エレンは、昨日のうちに、その話を聞いていた。
今更責めても仕方ないが、どうしてすぐに連絡をよこさなかったのかと怒りたい。もうログノフはバーミンガムに向かった後で、向こうで捕まえられるとは思えないが、行くしかない。
電話が終わると、ため息をついて、目に入った部下を呼んだ。
「ジャック!」
「はい」
ジャックは急いでアダムスのもとへ飛んできた。
「バーミンガムに行ってこい」
「はい」
「今すぐだ」
「え?あの、でも…今イオーノフの知り合いだった男の居場所がわかるかどうかのとこでして…」
「どこにいるんだ、そいつは…」
「多分、スイスです」
そこへ部長が入って来た。いつもノックをしない。
「イオーノフの件だが…」
「ああ、」
「イギリスでイオーノフを探していたアメリカ人が、二日前にスイスに入ったらしい。君、何か聞いているか?スイスだ…」
「いえ…、」
アダムスはそう言いながらジャックを見た。
ジャックもアダムスを穴が開くくらい見ていた。
「ログノフは、今朝バーミンガムに探し物をしに出かけたようですが…」
部長は、何か考えているかのようにしばらく黙った。
ジャックが口を挟んだ。
「あの、博士の知り合いがスイスにいるようなんですが…大学時代の研究室の仲間で…」
「ふーん」
部長が何も言わない時は、何か引っ掛かっている時だ。
最初のコメントを投稿しよう!