優しい彼の声

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お医者様が、 「さあ目を開けてごらん」と私に囁いた。 私は恐る恐る目を開けると、そこには鏡が用意されていた。 これが私…… ―・―・―・―・―・―・―・―・―・― これはひとつきほど前の話、私は一人街で買い物を楽しんでいた。 とても清々しい天気で私の足も軽やかなステップを踏んでいた。 ウインドウには綺麗に着飾ったマネキンが私を誘惑してくる。 「財布の中は寂しいわ、私の目的はバーゲンだもの」 そうマネキンに言い訳しながら私は贔屓にしている店へと歩みを始める。 そこへ――。 乗用車が向かってきた。 横断歩道じゃないわ、ここは歩道よ。 車が入ってくるなんて考えてもいなかったわ。 危機が迫っているのに呑気にそんなことを考えていた。 私の意識はそこで途切れたのだった。
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