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他にも様々な現象が起きた。古本屋からも本がほとんど無くなってしまった。規模の大きな共有サイトが乱立し、違法だが昔の本でもデータが容易に手に入るようになった。しかもそのほうが新品同様の本として再現されるため人気があった。このため古本屋でも、よほど本自体に値打ちがあるものを除けば、他は資源としてリサイクルに出すほかやりようがなくなってしまった。実際、紙が値上がりしたためそうしたほうが合理的だった。
本を買う側の立場としては紙の値上がりにより正規にダウンロードして購入しても得をしていると感じることはなかったようだ。当初は便利さによって歓迎されたが、いちいち紙を購入するのが面倒という声も挙がっている。
このように出版に関わる様々な立場から見渡すと、便利さの裏側に起きた不満というものが幅広く多くの人々を巻き込んだともいえる。廃業する人や失業する人がいる分、それがまた新しい何かを生み出す力へと向かい、別の便利なものを作り、また誰かが追い出されて淘汰されていく。その次の方向性というものが常に前もって用意されているのなら世の中は平和だが、そんなことは滅多になく大概は虚しさと停滞を招いている。
しかし運が良ければどさくさ紛れに、波に乗れることもある。風が吹けば桶屋が儲かるという言葉があるように不意にチャンスが訪れることもある。
しばらくの時が過ぎた。
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