異変の余波

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月が変わり、閉店した村の小さな書店の前に一人の青年がやってきた。店の入り口の貼り紙を感慨深く見つめている。ガラス越しに店内を覗き込み、空っぽになった書棚だけでなく、執拗に色んな角度から窺う姿は不審者と思われても仕方がないほどだった。そこへ買い物帰りに通りかかった元店主の娘が声をかけてきた。 「お兄ちゃん、おかえり。店の中が気になるの?本が無くなると案外広く見えるよね。」 「ああ。思ってたより広いな。ちょうどいい広さかもしれない。」 「お兄ちゃん、何かお店でも始めるの?」 「ああ。親父が許せばな。」夕飯時になり、家族三人で食卓に就いた。父と娘がどことなく重苦しい雰囲気を醸し出している反面、兄は意外と明るく振る舞っていた。そこへテレビコマーシャルが流れた。 (進化したプリンターで自宅に居ながら簡単に本が読めるようになりました。インターネットで書籍のデータをダウンロードすればこの通り、すぐに本屋さんで売っているのと全く同じ本が作れます。これであなたの家も本屋さん!更に進化したスキャナーで簡単に本の内容を読み取り保存できます。その上、不要な本はあなたの街のリサイクル業者が買い取ってくれます。これほお得な…) 父がリモコンを手に取り、テレビ画面に投げつけるような仕草をして言った。 「くそ!こんな製品ができたばかりに!」 「お父さんやめて!」 「父さん、そんなに悪いことばかりでもないよ。」兄がなだめるように冷静に言った。
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