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「あら、奈々。もう九時過ぎてるわよ? 早く寝ないと駄目でしょ。」
「だって、寒くてなかなか眠れないんだもん。ココア飲んで温まったら、眠れるかなぁと思って……。」
母さんと奈々のそんなやり取りを見ていたら、何となくその場に居るのが、俺は心苦しく感じた。
「俺……今日は疲れたから。もう部屋に行くよ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「お兄ちゃん、おやすみ~。」
その場から、まるで逃げるかのように。
現実から逃げるかのように、俺は小走りで二階へ駆け上がった。
早く一人になりたくて、急いで自分の部屋に入り、ベッドにそのまま勢いよくダイビングする。
(俺は、一体……何者なんだ? まさか、橋の下かどこかで拾われた子とか?
あぁ……もう分からない。いっそこのまま眠って……ずっと夢の世界を彷徨いたい……。)
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