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“いきなり神や妖怪を信じれば見ることができると私達に言われても、その言葉を信じるのが難しいのであれば……”
「俺はモモ達の言葉を信じるよ!」
雅が声を荒らげた。その様子をモモはじっと見つめる。
“マサ坊が信じてくれるのは私も知ってるよ。ただ、蒼多っていう坊やはどうだか私は知らないからねぇ”
「蒼多君も君達の言葉を信じてくれるよ!だから、俺は仲間になって欲しいと思ったんだ!」
蒼多は雅の言葉に思わずニヤニヤしてしまう。話の流れは相変わらずよく分かっていないけれど、雅に褒められていることは分かった。
“なら、見ることができると思うけど、よりはっきり見たいのであれば私達動物を連れていくのも1つの手だよ。私達は神や妖怪の使いという役目柄、嘘はつけないから見つければ人間に伝えるよ。ま、私達が人間の手伝いをするかどうかは別だけどね”
「そっか……。その手があるのか。モモ、教えてくれてありがとう!」
雅はにっこり笑ってお礼を言った。
「俺達、そろそろ帰るね」
と雅が言った瞬間、モモがいきなり飛び上がり、雅をつつき始めた。
「い、痛い!痛いよ、モモ!」
雅は必死でモモに訴える。蒼多はあまりの光景に驚いて雅達を見つめる。モモは一通り雅をつつくと、またさっきの位置に戻った。
“まったくどこの世界のオスも一緒なのかねぇ。自分の話さえ終われば終わりなんてさ。私達メスの話を聞くこともできないのかいっ!”
「わ、分かったよ!今度はモモの話を聞くよ!」
雅は慌ててモモに言った。そしてノートに文字を書いて蒼多に見せた。蒼多がノートを見ると、
「モモが自分の話を聞けって。話の内容は100パーセントの確率で、今年産んだ自分の子どもがまた黒かったっていう話だから蒼多君は帰っていいよ」
と書いてあった。蒼多は一瞬帰ったらモモにつつかれるのでは……と思ったのだが、モモは雅を見据えて蒼多のことは眼中になさそうだった。
雅君、ごめん……!
蒼多は心の中で謝り、空き地を去った。
蒼多が最後に空き地を見ると、モモの前で雅が正座をしていた。
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