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蒼多は雅に言われるがまま、その場をどいた。雅は蒼多がどいた場所の上を更に登り始めようとしている。
「それ以上登ると危ないよ……?」
蒼多は心配になり、思わず声を掛ける。すると、雅はキョトンとした顔で蒼多を見る。
「じゃあ、そこにいてよ。もし俺が戻って来なかったら誰かに知らせて。俺さ、カワランベーっていう河童に会いたいんだ」
雅の言葉に蒼多はキョトンとした表情を浮かぶ。
「カ、カワランベーって昔ばなしの……?」
蒼多はおそるおそる聞いた。
「そうだよ。何を当たり前なことを聞いているんだ?」
今度はまた雅の方がキョトンとした表情で蒼多を見つめる。
カワランベーってたしか、この村に伝わる必要なだけお椀やお膳を貸してくれる河童の話だよね……。
蒼多はカワランベーについて思い出していた。
「俺、行きたいけどいいかな?」
雅は待てないというオーラを出している。
「ね、ねぇ!ボクも連れて行ってくれないかな……?」
蒼多は勇気を出して、雅にお願いをした。
「何で?」
「ボクもそういう宝の話にすごく興味があるんだ。そ、それでよく周りにからかわれるんだけど……」
質問に質問で返す雅にめげず、蒼多は答える。
「夕暮れ時の山登りはやっぱり危ないよ。それにボクなら道案内できるかも……」
「ふぅん……」
蒼多の提案に雅は考えているようだ。
「君、素質があるかもな。ちょっと俺の家に来ないか?君が俺の思う通りの人なら、かなり魅力的な宝の話が聞けると思うよ」
雅の提案に蒼多は目を輝かせる。
雅君の話を信じよう!
蒼多の心は決まった。
「行きたい!でも、いいの?」
蒼多は即決した。
「いいよ。仲間になれそうな人なら大歓迎だよ。でも、ちょっと待ってて。このスコップ、学校の用具室にバレないように返してこないといけないから」
「えぇ!?そのスコップ、黙って借りてたのっ!?」
さっき、そのスコップで怖いことをしようとしていたんだ……。
蒼多はそう思いつつも、黙って雅の後について裏山を降りていった。
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