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雅の家は一言で言えば、平屋の古民家だった。
「結構古風な家に住んでいるんだね……」
蒼多はもっと新築な家に住んでいるのかと勝手に想像していたので、気の利いた言葉が言えなかった。
「ここ、母方の祖父母の家だから。俺、元々岩手の方なんだよ。両親は向こうにいるんだ」
サラッと雅が自分の家庭事情を話す。蒼多は一瞬聞き流したが、
「じゃあ、何で長野に来たの?」
と思わず尋ねてしまった。
しまったっ……!聞いてはいけなかったかも……。
蒼多は口を塞ぐが、時すでに遅し。しかし、
「これから君に話す話と関係あるから、まぁ、家に上がって」
と、雅は話す気マンマンでいる。蒼多はその様子を見てほっとした。
「ただいま」
雅が家の中に入る。その後を蒼多は慌てて追う。
「お邪魔します……」
蒼多はおそるおそる玄関の中に入る。目の前の土間にびっくりした。
「あ、土間だ!」
「こんなの、どこの家庭にもあるだろう?俺ん家にもあったよ」
雅が何で驚いているのか分からないという表情をする。蒼多は雅の発言と表情にびっくりした。
「あれ?じいちゃんもばあちゃんも小早太郎(こはやたろう)もいないな。散歩かな……」
雅はキョロキョロと家の中を見渡す。
「誰もいない家に上がったらいけないから、ボク帰った方がいいかな……」
蒼多は心配するが、雅は
「いや。むしろ好都合だから、このまま俺の部屋に行こう」
と言って、蒼多を土間の右隣の自分の部屋へ案内した。
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