雅の家

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雅の部屋は何とも殺風景な部屋だった。文机と畳まれた布団と2つの葛龍(つづら)しか置いてなかった。 「その辺にランドセルを置いといていいよ」 雅はそう言って、文机の横にランドセルを置いた。蒼多は入り口の右横にランドセルを置く。 「……この机や箱は何だか昔ばなしに出てきそうだね」 蒼多は雅の部屋に置いてある物に興味深々だ。 「この机は文机、箱は葛龍(つづら)って言って、舌切り雀の話に出てくるものだよ。全部俺が家から持ってきたものなんだ」 雅はスラスラと答える。 もしかしたら、雅君は昔の物が好きな人なのかもしれないなぁ……。 蒼多は雅について思った。 「君に見せたいものがあるんだ」 雅はそう言うと、葛龍の中からえんじ色の薄汚れた頭巾を出した。 「これ、何?」 蒼多は興味深々で雅の近くに寄ってきた。 「これは聞き耳頭巾なんだ」 雅は凛とした声で答える。 「聞き耳頭巾って昔ばなしに出てくる、被ると動物の声が聞こえるっていう頭巾だよね?」 「そう」 「何で雅君が持ってるの?」 「俺ん家が聞き耳頭巾を手に入れたお爺さんの直接の子孫だからなんだ」 「えぇ!!そうなの?すごいね!あの昔ばなしは本当の話だったんだ!」 蒼多は興奮して大きな声で話す。 「被ってみる?縁側の障子を開けるとすぐ庭だから、動物の話す声が聞こえるよ」 雅が聞き耳頭巾を蒼多に渡す。 「え……、本当にいいの?ありがとう!」 蒼多は聞き耳頭巾を被って、縁側の障子を開けて、外を見る。
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