11.純白な彼女

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その後は健が上手く対処してくれたらしい。 健も今回ばかりはやり過ぎたと反省していた。 後日、白河さんが今にでも泣き出しそうだったという話を聞いて、最低なことをしたとさらに悔やんだ。 あの時のことを謝れないまま時間だけが進み、あっという間に夏休みを迎えていた。 世間は楽しい夏休み真っ盛りだというのに、俺たちは相変わらず勉強で埋め尽くされた日々を過ごしていた。 ”埋め尽くされる日々”と言っても、昼休みになるともっぱらサッカーなので、ちゃっかり息抜きはしているのだけれど。 夏休みの課外授業で特進クラスが普通クラスと違うところは、午後もみっちり授業があるということだ。 昼前に帰れる健たちを羨ましく思いながら、午後の授業に備えて教室に戻ろうとしたその時、健がそれを引き止めるように呟いた。 「なあ。今日の夜、河川敷で花火大会があるらしいよ」 「河川敷?」 「あ、怜斗は知らないか。 ここらじゃ有名なんだよ。花火1万5千発。 県外からわざわざ足を運ぶ人もいるくらい」 「へー…」 「何?やっぱり興味ない?」 「いや、人混みがちょっとな…」 あの花火大会独特の熱気と人の多さを想像しただけでげんなりする。 「野郎だけで行くのもな。色気ねー」 ハハッと健の笑い声を聞きながら、持っていたペットボトルの水を一気に飲みほした。
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