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心なしか、彼女も頬笑み返したように思う。
「ひゃっ」
「あぶねっ」
前のめりに倒れそうになって、咄嗟に彼女の腕を引くと、そのまま抱きしめる。
「大丈夫…?」
「ごめんなさい!」
彼女との距離があまりにも近くて、視線を逸らすことができなかった。
やっぱり、俺は…。
もうここまできてしまったら、自分の気持ちに嘘はつけないと思った。
「……来て」
彼女の手を握り締めながら人込みの中を歩いていく。
向かったは家の近くにある小さな公園。
ここから見える花火は絶景で、そして意外にもここを知る人は少ない。
彼女をベンチに座らせると、続けて腰を下した。
辺りに人は見当たらず、俺と白河さんだけだった。
俺はどうしても、二人で話をしたいと思った。
そして彼女に、ずっと謝りたかったことを伝えた。
白河さんを異様に避ける態度を取ってしまったこと。
噂をすっかり信じて、傷つけてしまったこと。
だけど、本当は傷つけたくなくて、やさしさとは違うけれど、君に近づかない選択が君を守る術だったんだよ。
そんなこと言葉では伝えなかったけれど。
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