Vol.2 行列のできる電車

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丸ノ内線は、真っ暗な長いトンネルから、後楽園駅の手前で一旦地上に顔を出す。 その時、僕は目が点になった。眼前に広がる銀世界。 ーーー雪国。川端康成の本を手にしたこともない自分の脳裏に、彼の有名な一節が頭をよぎる。 車内の人々は皆、悲喜こもごもの表情を浮かべ窓の外を見つめている。 窓から見える東京ドームの屋根には、まるで大福餅のようにこんもりと20㎝以上雪が積もっていた。 電車が滑り込んだ後楽園駅のホームは、吹き込む雪で真っ白だ。 ホームには溢れんばかりの老若男女が寒さで凍えそうな表情を浮かべ、僕らが乗っている電車の扉が開くのを今か今かと待っている。まるで吹雪に襲われビバークしている登山隊のようだ。 電車の扉が開くと、降りる人がいるのも無視してホームに待ち受けていた人々は猛烈な勢いで車内に殺到した。 確かに天気予報では夕方から雪だったけど、こんなに積もるとは。 こんなことなら、午後の授業はさっさと切り上げて早目に家に帰れば良かったと後悔した。 そう思ったのも束の間。僕は、超満員の電車の中の奥へ奥へと凄い圧力で押しやられた。
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