第5話~啓示

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厚い雲に陽の光が遮られている。 鳥も花も、森の木々も、囁きを交わすことすらなく沈黙している。 いつもとは違う、なにもかもが暗く沈んでひっそりとした森の中。 ディアンは泣いていた。 私は一人になってしまうの? お母様が逝ってしまう。 私を残して消えてしまう…。 なぜあんなことを言うの? 「あなたは決して誰かに心を渡してはいけない。約束を…。ディアン、私の愛しい子。愚かな母を許して…。」 なぜ? お母様は何を恐れているの? 一人きり…ずっとこの森で生きてゆけと。 人に心を渡してはいけない…。 外に心を向けてはいけない…。 ごめんなさい。私はもうその禁を犯しているのかもしれない。 罰が下るの? お母様が逝ってしまうのは私のせい? 誰か教えて…。 今日は誰も話しかけてはくれない…。 鳥は?花は? いつも私の頬を優しく撫でてくれる風は…? …私を見つめてくれるあの人は? もうずっと、姿を見せてくれない…。 時だけが過ぎ、辺りに夕闇が迫ってくる。 「ディアン…」 セオルが呼ぶ。 ディアンはその声に首を振った。 「セオル様…いやです。怖い。」 セオルは静かに、しかし容赦なく事実を告げる。 「ディアン、ミュセルのそばに…。あなたの母親のそばにいなくてはいけない。彼女の時はもうすぐ止まる。明日の陽の光をミュセルが見ることはない…。」 ・・・・・・・・・・
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