第6話~愛惜

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ヨシュアの館。 サラが困り顔で立っている。 このごろはおとなしく神界におられたのに…。 またどこかへ消えてしまわれた。 「…ヨシュア様…?」 サラの横を何かの気配がすり抜けた。 ヨシュアの気によく似ている。 それは微かな風のように館の中をしばらく漂って、消えた。 サラの胸に誰かの声が響いた。 細く小さく哀しげで、そして切ない懐かしさに満ちた声。 "ヨシュア…" たしかにこの館の主の名を呼ぶ声であった。 あるいは幻の声だったろうか…。 ヨシュアを探す自分の心が聞かせた幻だったかもしれない…。 サラは黙って館を出た。 探したところで神界にヨシュアはいないだろう。 わかっている。 もう自分の仕事は終わったのではないだろうか? そんな気がして、 サラは自分の造り主の名をつぶやいた。 セオル様… セオル様、 私はいつまで此処におらねばなりませぬか…? ・・・・・・・・・・
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