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"ほう…良い出来ではないか。"
遥かな昔に作りかけた玩具をふと思い出し彼は世界を眺めていた。
世界は様々なものに満ちていた。
"わたしの分身はどこに姿を隠しているのか?"
たしか、シオンと名をつけた。
呼んでみたが、こたえはなかった。
"わたしの声が聞こえぬわけもないだろうに。
…まあ、良い…。"
多少不快ではあったが、特に会いたいわけでもない。
それよりも昔の玩具が思いのほか様々な作品に満ちていることに大いに満足を感じた。
良い秩序だ。
均衡がとれている。
だが、それはそれで退屈でもあるな…。
"さて…?あの者は誰であったか…、それとあの者は…何であろうか?"
人間界と神界に、一つずつ彼に違和感をもたらすものがあった。
"セオル?…人の傍らで過ごす神など、つくった覚えはないが…。
ヨシュア…、わたしの分身によく似ている。妖精であろうか?…いや、妖精でもない…。"
しばらく考えてみたが、やがて面倒になった。
秩序には少し歪みがあったほうがよいのだ。
"なにか面白いことが起こるやもしれんな…"
彼は笑った。
しばらくここで退屈を忘れるつもりであったが、どうしたことかまたひどく眠くなった。
闇にちらりとシオンの気配を感じた。
"あれは闇の王となっていたのか?たしかに…見えざる闇夜のほうが面白い。秘めたることは闇にこそ曝されやすいものだ…。"
シオンの姿を見てやろうと思ったが、睡魔が勝った。
"好きに楽しむがよいだろうよ…。"
彼はつぶやくと、ひとつ吐息を世界にはいて、深い眠りに落ちた。
それきり彼の意識は消滅した。
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