第6話~愛惜

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深い闇の中、シオンが何かに飽いたように座っている。 闇の玉座は冷たい…。 もたれるように片肘をつき額に当てられた手、漆黒の絹の髪が象牙の頬を隠している。 怠惰に組まれた脚。 それでもその線に沿って闇色の衣が美しい流れの襞を作っている。 他方の腕は面倒そうに肘掛けから外に投げ出されてはいるが、白く長い指が、その持ち主の意図とは無関係に完璧な美を誇示していた。 幽かに闇の帳が揺れた。 「…。ヨシュアか…?」 シオンは動きもせずつぶやいた。 すっ…と、投げ出された手の甲に何かが触れた。 シオンは瞳を上げ、あたりをうかがう。 微かな気配がシオンの身体を優しく撫でる…。 闇の中で何かが光った気がした。 シオンは呆然とした面持ちで立ち上がる。 "…シオン…様…" 胸に自分の名を呼ぶ声が響いた。 なんと懐かしく優しく美しい声だろうか。 手にあたたかい何かが、ふたたび触れた。 そして一瞬の後、 気配は、 消えた…。 シオンは手の甲を自らの唇に押し当てる。 …微かに濡れていた。 瞼を閉じ、しばらくその感触を愛おしんだ。 「…もう…泣かずともよい…。」 静寂の闇に、つぶやくシオンの声が沁みる。 「許せ…」
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