第2話~予感

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「ヨシュア様を見かけませんか…?」 サラは神界を探してまわっている。 「また下に出かけてしまったのではないかしら?」 天女達の答えは皆同じだ。 「しかたのないこと…。この頃は私の言うことなど聞いても下さらない。」 サラは困り果てた顔をしている。 「大丈夫。ヨシュア様は思慮深い方ですもの。心配はいらないでしょう?」 「父君に似て逞しい。賢くて美しくて。」 「できないことなど何一つありはしない。」 天女達は勝手におしゃべりを続ける。 「あ、でも大変!下には野蛮な狩人がいる。もしも矢がヨシュア様に当たったら…」 「いくらシオン様の子でも、矢が胸を貫けば…」 「大変!命を落としてしまう。だってヨシュア様の半分は…」 「半分は…母君の血。人ですもの。」 「しっ…!軽々しく秘密を口にするなんて。もしもヨシュア様の耳に入りでもしたら…」 サラは慌てて皆の話を遮る。 天女達は肩をすくめてあたりを見回した。 「ああ恐い。それよりもシオン様に知られることのほうが大変…。これは口にしてはいけない秘密。」 「そう、秘密。」 皆は唇に人差し指をあてた。 「でも、サラ。ヨシュア様は本当にこのことを知らないと思う?シオン様の子よ。何でもお見通しのような気がするけど…。」 誰かが疑問を口にする。 「…。」 サラは黙ってしまった。 そう…。ヨシュアが不思議に思わぬはずはない。 彼が幼い頃、サラは何度か訊かれたことがあった。 なぜ自分にだけ父がいるのかと…。 妖精や天女は神々が創り主だ。その神々にも創り主はいる。 だが誰もその創り主を"父"とは呼ばない。 "父"を持つのは神界ではヨシュアだけだ。 そして人間界には皆に"父"がいる。 もう一人"母"と呼ばれる者もいる。 その疑問にサラはうまく答えられたためしがなかった。 "シオン様にしかわからぬことでございます。" 何も知らないと答えるほかになかった。 "サラは私の母か?" 一度はそう訊かれたことさえあった。 自分は命じられてヨシュア様のもとに遣わされた。 そのままを答えた。 ヨシュアは不思議そうであったが、無理に問いを重ねることはなかった。 何かが起ころうとしている…。 自分をヨシュアのもとに遣わしたのはセオルだ。 サラはそのときにセオルがつぶやいた言葉を忘れたことはない。 "遥か時の彼方…なにごとかが成就される。 それがよき事か悪しき事か…。 サラよ 注意深くあれ…。"
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