【ルールの意味】

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高橋君… 私と同じアパートに住んでいるのだろうか…。 いや…。 だとしたら、 朝の出勤する時…アパートを出る時とかに見掛けるはずではないか…。 でも、今まで一度も彼を見掛けた事は無い…。 気が付くと… 私は、自分の部屋のドアの前まで来ていた。 ハンド・ポーチを開けて部屋の鍵を探すが、 中がごちゃごちゃしていて、なかなか見付からない。 私の頭の中で、 様々な考えがぐるぐると回りながら浮かんでは消えて行った…。 もしかして… 高橋君は、私がもう少ししたらベッドに入る事を知っているから、 『こんばんは』じゃなくて『おやすみなさい』って挨拶をしてきた…? でも… 私は、早朝ジョギングの為に毎晩、早く寝てしまう事を… 会社内の誰にも言っていない…。 それと… 何で、高橋君がウチの近くのゴミステーションの前にいたの? 私は… 動揺の為か、 なかなか部屋の鍵を見付ける事ができないでいた。 更に… 私の頭の中に、 様々な最近の事柄が浮かび上がって来た。 会社の社内報の『好感度ランキング』で… 私に入っていた『1票』…。 営業部に勤めるモトカレの裕也が、別れ話の時に私に言った言葉…。 『なあ!今の久美を好きになってくれるヤツがきっとこの先、現れるって!『俺の周りにも』ぽっちゃり好きなヤツいるしさ!』 それと… いつまで経っても実家からの手紙が届かない、空っぽの郵便受け…。 まさか… 実家からの手紙は『ちゃんと届いていた』のだが それを『誰か』が…私がいない間に、こっそり抜き取っていたのだとしたら…。 高橋君… 彼って、もしかして…。 さっき、ウチの近所のゴミステーションの前に立っていた高橋君…。 まさか… 彼… あそこで『自分のゴミを捨てようとしていた』のではなくて… 私が今朝、あそこにこっそり捨てた、私の部屋のゴミを… 『アサる為に』… あのゴミステーションの前に立っていたのでは…? …と… 『チーン』 私の背後で… エレベーターが到着する音が聞こえた。 私は… 『ゴミは、ゴミの日の前日ではなく、ちゃんと当日の朝に捨てるように』 と、いう、 『ルールの意味』が… 何となく、分かったような気がした………。 ~END~ 表紙&挿絵イラストとタイトル/束砂さんimage=510336847.jpg
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