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「兄さん、生きてる?」
「生きてるよ」
そう言って歯を見せながら笑う兄さんの顔は青白く痩せている。ネイビーのパジャマから覗く手首はきっと、俺のものより細いだろう。けれどもその体から発せられる低い声は、見た目にそぐわず明るく朗らかなものだった。
カーテンが開けられた窓からは陽の光が射し込み、兄を照らしている。それが彼の存在をいっそう儚くさせていた。
「もう秋だねえ、焼き芋食べたいわ」
「そういえば昨日、母さんが石焼き芋買ってきてくれてさ。すっごく美味かった」
「へえ。で、俺の分は?」
「俺が美味しくいただきました」
それから近況やとりとめのないことをたくさん話した。話が尽きることはない。
ふと、兄が大口を開けて欠伸をした。
それは終わりの合図だ。兄さんが戻る合図。
「あー、ごめん。そろそろ寝るわ」
言いながら、かなり眠いのだろう。のろのろと横になると布団を口元まで引っ張り上げる。
「いいよ気にしないで。おやすみ、兄さん。良い夢を」
「おう、おやすみ」
そうして兄は夢の中へと戻っていく。
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