0人が本棚に入れています
本棚に追加
「また来るから。早く起きろよ」
誰も寝ていないベッドへと言葉をかける。部屋を出ようとドアへ手をかけた時、名前を呼ばれたような気がしてバッと振り返った。しかしそこには誰もいない空間が広がっているだけだ。
ふと寂しいと思った。胸が苦しくなり、咄嗟にグッと奥歯を噛み締める。けれど、
「…兄さんのバカやろう」
溢れる涙がぽたぽたと床へ落ちていく。どこにもいない、そのことがどうしようもなく寂しかった。
その時、
「早く起きられるよう頑張るから、おまえもちゃんと寝ろよ」
最初のコメントを投稿しよう!