夢路を辿る前に

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「また来るから。早く起きろよ」 誰も寝ていないベッドへと言葉をかける。部屋を出ようとドアへ手をかけた時、名前を呼ばれたような気がしてバッと振り返った。しかしそこには誰もいない空間が広がっているだけだ。 ふと寂しいと思った。胸が苦しくなり、咄嗟にグッと奥歯を噛み締める。けれど、 「…兄さんのバカやろう」 溢れる涙がぽたぽたと床へ落ちていく。どこにもいない、そのことがどうしようもなく寂しかった。 その時、 「早く起きられるよう頑張るから、おまえもちゃんと寝ろよ」
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