第1章 勅命

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第1章 勅命

ノルスレーダー国は赤道に接する場所にあり、砂漠の国としても知られている。あらゆる部族が住むその国はとても豊かで他国とも親交があり、誰もが一度は住みたいと噂されていた。 特に国の真ん中にある都市リースは絹や貿易が盛んで、人々は商売に忙しく、生活に苦しい者など一人もいなかった。この都市に初めて足を踏み入れた人々は皆、口にする。 『何故この国は皆、幸せそうなのか』と。 幸せという定義は人それぞれだ。しかし、仮にそれを笑顔と称するならば、この国に笑顔でない者など存在しない。不思議な雰囲気を持つこの国で立ち止まる旅人や商人に地元でゆったり過ごしている人々は交互に言葉を紡ぐ。 『国王様がこの国をお守りしてくださっているのだ』 『国王こそ、我等の希望なのです』 『私達の国王は神様も同然です』 『この国を盛んにしてくださった、国王様に感謝しております』 王が、神? 呆然としている旅人に"ある"部族は耳打ちする。 『王は人です。神の力など持っておりません。……しかし、この国は"そう"なのです。郷に入っては郷に従え、ですよ』 ――――…この国は一体どうなっているのか。 新しく来た者は口々に言う。『王とは何だ?神なのか?』と。さて、その答えは何なのか。 その国にある1つの勅命が立てられた。
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