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「じゃあ、もう呼びません」
私の手からニワトリ頭をそっと抜き取ると、立ち上がった桜井くんはそれを机の上に置いた。
そして、そのまま振り返らずに言葉を続けた。
「『双葉』って。……いつも心の中ではそう呼んでたから。会社でうっかり言わないように、わざと名字で呼ぶようにしていたんです。それが嫌だったなら謝ります。そのかわり、これからは『双葉』って呼び捨てにします。だから、俺のことも『桜井くん』って呼ぶのはやめてくれませんか?」
「へ?」
突然、呼び捨てにするとか『桜井くん』と呼ぶなとか、わけがわからない。
「へ?じゃないです。俺のフルネーム知ってますよね」
「桜井 怜人……くん」
「”くん”はいりません」
何を考えているのかサッパリ読めない桜井くんの頭は、案外ニワトリ並みに空っぽなのかもしれないな。
そんな失礼なことをふと思った。
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