困った住人

4/5

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「井上さんどうしたの?」 「転勤しました。」 本当は部署が異動になっただけで同じ会社にいるのだが井上からそう言うように頼まれていた。余程嫌なのだと思う。 「本当に転勤したの?嘘くさいな。まぁいいや。それで、どうせ家賃のことなんでしょう?」 「はい。半年間滞納されています。大家さんのほうからも払えないなら出ていってもらうように頼まれています。まず確認したいのですが支払う気はありますか?」 「あるわよ。あるに決まってるじゃないの。ここ追い出されたらどこへ行けばいいの?そこまで世話してくれるの?それだったらかんがえてもいいけど。私、入院してたのよ。あんまり言いたくないけど精神病で入院してたの。今も通院しながら沢山の薬を飲んでるの。そしたら払えるわけ無いじゃない。こんな私を追い出すっていうの?ひどい話もあったもんだね。大家さんの電話番号教えて。私が直接話ししてみるから。」 「いえ、大家さんとはうちの会社に管理委託されていますので番号は教えられません。酷な話かもしれませんがそれはあなたの都合です。生活保護を受けているそうですがそこには家賃の分も含まれているはずです。何も今全部払えといっているわけではありません。ここに今後も住みたいというのであればもう一度聞きます。払う気がありますか?」 「払いたいけどどうすればいいかわからない。生活保護もらってるっていうけどね。あんた大した額じゃないんだからね。一ヶ月分も払えば結構厳しいんだからね。」 「そこをなんとか最低でも2ヶ月分払えなければいつまで経っても追い付きませんよ。大家さんはもう出ていって欲しいと言ってるんですよ。正直ここの家賃はここら辺の地域で一番安いくらいの金額です。ここで払えなければどこへ行っても厳しいと思いますが。これから半年間、毎月2ヶ月分の家賃を入れてくれるのならそれで大家さんに話してみましょう。これ以上のことはできません。」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加