壱之巻・始

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『……何を言ってるんだよ……つっちーが……つっちーがそんな事する訳……』 『そうやって……僕達の御心を油断させるために……潜り込んでいたんだよね……そうだね椎弥!!!』 紅蓮の声が強まり…尾が張る様に逆立つ。 しかし裏切られていたという心持。そして其を信じたくはないと言う現実に……紅蓮の眼は狼狽えを隠せずに震える身体で椎弥を睨んだ。 方や……敵意を向けられたというのに凪いだ湖面の様に動きひとつ見せぬ椎弥。 今まで見ていた彼とは別人の様に恐ろしい目つきで椎弥と辰巳は紅蓮を見下ろしていた。 『ああそうだ……全ては捌束脛之國の天下に!!!』 そういうな否や椎弥が大きく手で弧を書く すると手に何を仕込んでいたのだろうか とりもちの様に粘着のある太い糸は紅蓮を捕らえ動きを封じた。 余りに早く瞬く出来事で在った為……その全てを受けて仕舞った紅蓮 『!!なにこれ!!!!くっそ…!!!!こんな…っ!!!!!!』 身体を引こうにももがけばもがく程、それは身体に絡みつく 目の前で起きる 児雷也之國には無縁の出来事に、井小夜は蒼白の顔を向け大きく震えた。 『井小夜!!!!!』 叫ぶ声は森をも穿つほどに鋭く井小夜へ刺さる。 『逃げて!!!』 大きな声で吼える紅蓮。刹那椎弥は糸を自身に引いた。 何という力か…… その力に抗えず、紅蓮はどんどんと引き寄せられる。 『早く逃げなさい!!!!!!!!』 壱層大きく吼えたが それは椎弥により 握る短刀により遮られた。 ーどっ…… 鈍い音がいちど 響いた
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